こんにちは。継続的に売れる仕組み再構築の専門家、諏訪昭浩です。

今執筆中の本の中にスタッフ教育についての部分があります。僕は従来のスタッフ教育に否定的で、できるだけやらない方がいいと考えているので、あれこれとノウハウを語っているわけではなく、読まれる方は少し拍子抜けするかもしれません。

スタッフ教育は不要。さらにモチベーションは機能しない。こんなことを言ってるのですが、あなたはどう考えますか?

モチベーションがパフォーマンスに作用するという前提条件は正しいのか?

「馬の鼻先にニンジンをぶら下げると速く走る」という話は誰でも聞いたことがあるでしょう。でも実験した人は本当にいるのでしょうか?
全ての命題には前提条件(アサンプション)というものがあって、この話の前提条件は「馬はニンジンが好きだ」ということです。でも全ての馬がニンジンに目がないわけではないし、その時満腹で食べたくないかもしれないので、この前提条件は誤っています。前提条件が誤っているのでこの命題は「偽」(間違っている)です。
「社員にモチベーションを与えるとパフォーマンスが向上する」と言えば疑問を持たれる方は少ないでしょうが、これは「馬の鼻先にニンジンをぶら下げると速く走る」と同義です。
50年以上前、ある実験を行って「社員にモチベーションを与えるとパフォーマンスが向上する」とは限らないことを示した学者がいました。
カナダの心理学者、サム・グラックスバーグは、被験者に賞金を出す場合と出さない場合では、どちらの被験者がより早く問題の解法を見つけるかを測定しました。
今の常識からすると、賞金を提示された被験者のほうが当然ながら早く解法を見つけ出すに違いないと考えるでしょうが、実験の結果は、その逆だったのです。設問の方法にもよるでしょうが、少なくとも経済的モチベーションがいつでも100%効果を発揮するはずだというアサンプションは1962年の段階で否定されているのです。
経済的モチベーションは、心理学ではいわゆる外発的動機と呼ばれるモチベーションに属します。外発的動機は、賞罰や強制、評価などが要因になって行動が生じるという考え方ですが、一方の内発的動機は、その人自身の興味や関心が要因となって行動が生じるとするものです。
グラックスバーグの実験では、外発的動機が必ずしもパフォーマンス向上をもたらさないということが示されており、また、心理学的には外発的動機の効果は短期的であるとされます。つまり、スタッフのパフォーマンス向上を図る上で外発的動機に依存するのは誤りだということです。
結局のところ、スタッフのパフォーマンス向上には内発的動機の高揚が必要であり、僕が考えるスタッフ教育とは、知識やノウハウを「教育」するものではなく、内発的動機、すなわち、興味や関心を引き出すための仕組み作りとなるわけです。
「ただ楽しいから仕事をする。」「ただやりたいだけ。」こういうシンプルな、自分の中に生じるモチベーションをいかに引き出してくるか。これがスタッフ教育の目指すところです。
僕が認定講師をしている日本パーソナルブランド協会の認定講座では、最後に「答えは自分の中にある」という言葉を使って講座を終了します。自分の中にある答えを引き出す手助けをするのが、講師なり教官なりの職務であり、「教えずに教える」という事なのです。
今日のまとめ
スタッフ教育は正解を押しつけるものではなく人それぞれのプロセスを確認する場です。人それぞれのプロセスを認め、それぞれから生まれた正解を認めることから、内発的動機が生まれるのです。

 

この記事を書いた人
諏訪昭浩(すわあきひろ)
「継続的に売れる仕組み構築の専門家」
1961年広島生まれ。在米11年のMBAを持つ米国公認会計士として複数企業の経営を歴任した元エリートビジネスマン。自らが実践してきた、選ばれるため、売り上げるための仕組み作りとパーソナルブランディングをベースに独自のノウハウを構築し、セミナーやコンサルティングを行っている。

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