こんにちは。広島ブランド工房代表の諏訪昭浩です。

新型コロナウイルスの感染拡大にも少しだけ衰えが見えてきたようですが、社会経済への影響はまだまだ収まらず、むしろこれからです。僕がアメリカ経済分析をしていた数十年前、失業率は6%以上になるとヤバいと言われていましたが、今年4月は何と過去最悪の14.7%。世界経済を牽引してきたアメリカがこの有様。世界中で、人が、社会が疲弊していくのは、これからです。

今回のコロナ問題で痛切に感じた、日本という国の仕組み、考え方、国民性があります。その中で、手続きが一般人には手に負えないくらい非常に複雑で(今は簡素化の動きがあります)、困っている方々が申請に難儀している雇用調整助成金について、なぜそうなるのか、書いてみます。

経営には置かれている環境の理解がとても大事ですが、そのうちの一つは、日本という国自体のしっかりとした理解です。これができていない方々が実は多いですね。今日の記事が日本理解のヒントになれば幸いです。

役所が複雑な手続きを要求する理由は?

厚生労働省が管轄する雇用調整助成金は、簡単に言うと、雇用を維持するため(給与を支払い続けるため)に必要な資金のかなりの部分を助成するものですが、簡素化が進みつつあるとは言え、その手続きが極めて複雑です。

提出書類は10種類以上。合計で数十枚、社員数によっては数百枚にも及ぶ書類作成が必要です。しかも、そのような手続きをしたことがない中小零細企業の経営者にとって、自分で手続きするには内容が難しすぎます。

助けたい人々を逆にいじめているようなものです。餌をちらつかせてなかなか食べさせないわけです。

なぜこんなに複雑な制度になっているのか。

それは日本という国に根付いたこのような考え方があるからです。
★ ゼロディフェクト文化
僕がアメリカの自動車部品メーカーに勤めていたころ、日本の自動車メーカーに納入する部品のディフェクトレシオ(欠陥率)は非常に低く、極めてゼロに近い数値でした。メーカーもそれを要求し、そこには、「欠陥はないのが当たり前」という考えがありました。
一方、アメリカのメーカーはどうかというと、ディフェクトレシオはその数倍、ヘタすると数十倍高いのです。ここには日本と違い、「ある程度の欠陥はあって当たり前」という考えがありました。
「失敗をしてはいけない」日本では失敗を恐れてチャレンジする人が少ないので、失敗しても取り返しがつくシステムがあるアメリカと比べると、たとえば起業家が育ちません。これも「ゼロディフェクト文化」の弊害です。
★ 人間皆性悪説
性善説と性悪説。日本はどちらでしょうか? 言うまでもありません。日本の多くのシステムは、「人は本来悪いものだ」という性悪説の上に成り立っています。
悪い人がいるからそれから身を守るシステムになります。コロナに関する助成金や給付金も、当然不正受給する人がいると考えてしまいます。
この2つの考え方が、コロナ関係の助成金や給付金の制度設計にどう影響しているかというと、「不正受給を絶対に防ぐ(ゼロにする)ような制度にしなければならない」となるわけです。
もし、このような考え方がないか小さければ、「不正受給? そりゃあるだろうけど、とにかく早く支給できる制度にしよう。不正は後で厳しく取り締まればいい」と、こうなるはずです。これが絶対にできないのが日本なのです。雇用調整助成金の手続きもこうして複雑になってしまったわけです。
今日のまとめ
海外に住んだ方が「日本のことを質問されて答えられなかった」と言われるのをよく耳にします。日本人だから日本のことを良く理解しているというのは錯覚で、理解しようとしなければ理解できないままです。日本特有の文化や考え方は、今日ご紹介したこと以外にもたくさんあります。これを機に、意識的に日本理解を心がけてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いた人
諏訪昭浩(すわあきひろ)
「継続的に売れる仕組み構築の専門家」
1961年広島生まれ。在米11年のMBAを持つ米国公認会計士として複数企業の経営を歴任した元エリートビジネスマン。自らが実践してきた、選ばれるため、売り上げるための仕組み作りとパーソナルブランディングをベースに独自のノウハウを構築し、セミナーやコンサルティングを行っている。

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